電車内で初めての絶頂 その2
翌朝。駅に向かう途中で、昨日のタイトスカートをクリーニングに出した。
目立つような汚れはなかったけど、でも、やっぱり何かがこびりついているようで気持ち悪い。
それが自分の部屋にあると思うだけで、何となく憂鬱な気分になる。
だから、さっさとクリーニングに出して、すっきりしたかった。
そして、いつもの時間にいつもの電車に乗った。
昨日のことが頭を過ぎり、思わずキョロキョロと車内を見回してしまう。
あの背広姿は見当たらない。
何となくほっとした息を吐きながら、
いやまあ、そうそう痴漢に遭ったりはしないよね。
わたしって狙われやいタイプでもないみたいだし、昨日のようなことが続けてあるとも思えないし。まあ、昨日はたまたま、変なのに出くわしただけだ。
などと、自分に言い聞かせるようなことを考えてしまう。
まったくいらん心配だ。そんなことを心配するほど胸もおしりもないのに。
自分の貧相な体型を思い浮かべて、少し落ち込みそうになる気分を振り払いつつ、空いているつり革のところまで人を掻き分けるように進む。
つり革を掴み、ほっと一息。たすき掛けにしてるショルダーバッグを身体の前で持ち、視線を窓の外に向けると同時に、ドアが閉まって電車が発車した。
目の前の座席には、文庫本を読むOL風の女性。
いいなあ、座れて。そう思った時、いきなりおしりを撫でられる感触を感じた。
えっ? まさか、また痴漢?
顔を上げて周りを見回してしまう。昨日のように後ろに密着されているような感じはない。
左右の人もそんなに密着してきてない。普通につり革を持ってぼーっとしてる。
と、またおしりを撫で回された。思わず身体が硬直してしまう。後ろから?
その後ろから触ってくる掌は、わたしのおしりをスカートの上から撫で回しているようだ。
スカートの表面が引っ張られて、裏地がストッキングと擦れるような感触を感じる。
つり革を握る手に力が入った。
昨日のようなことになったらどうしよう。それに今日はプリーツスカートだ。
あの時みたいに押しつけられたら、内腿まで割り込んでくるかもしれない。
アレを押しつけられた時の感触を思い出し、嫌悪感で身体が強ばった。
とっさにバッグを持った手を後ろに回す、と、ふっと、掌の感触が消えた。
そのままバッグでスカートの上からおしりを抑えるようにして、後ろから触られないようにする。
これであきらめてくれないかな。
そう思ってると、今度は大腿の裏辺りをスカートの上から摩られるような感触を感じた。
バッグを持つ手で払う。すると今度はおしりのほうを触ってきた。それも払い除ける。
何なんだろう。何だか馬鹿にされてるような気がする。
そんな感じでごそごそしてると、ふっと目の前のOL風の人が頭を上げた。
思わず硬直してしまう。そのOL風の人は、咎めるような視線でわたしを一瞥してから、すぐにまた手元の文庫本に視線を落とした。
心拍数が上がる。気づかれた? いや、そういうわけではないらしい。
ごそごそしてたから注意のつもりでわたしを見たのかも。
バッグを持った手をおしりにあてたまま硬直したわたしをどう思ったのか、後ろの掌はスカート越しに太腿の裏をやわやわと撫でるように触っている。
騒ぎは起こしたくない。それにまあ、スカートの上から太腿やおしりを触られるくらいであれば我慢できないこともないのだ。そう、昨日のことで少し神経質になってるのかもしれない。
それに、このままおしりのところでバッグを持っていれば、昨日のような目に遭うこともないだろうし。
しかたがない。わたしは軽く息を吐いて、その感触を無視することにした。
こちらが何の反応しなければ、そのうち飽きるはず。
しかし、その掌は執拗にわたしの大腿の裏側を摩り続け、しばらくスカートの裏地とストッキングが擦れる感触が続いた。
いつまで触ってるんだろう。そんなとこ触られてもくすぐったいだけなのに。
いい加減、静電気が心配になりはじめたとき、ふと大腿に熱を感じた。
熱く湿り気を帯びているような掌の感触。
ストッキングの上から、その掌で撫でられる感触。
ギクっとしながら視線を落とすと、スカート前横のプリーツが広がっていた。
一瞬、なにが起こっているのかが解らなかった。穿いてるスカートは膝丈だ。ミニじゃない。
だからストッキングの上から太腿を触ったりはできないはずなのに。
なに? ということは、スカートの中に手を入れられてるってこと?
その熱い掌は、ストッキングの感触を楽しむように、軽く太腿を撫で摩りながら、
少しずつおしりに近づいてくる。その手の動きでスカートの裾がさらに少し持ち上げられ、
スカートの前部分まで不自然によれてくる。
とっさにおしりにあてていたバッグでスカートの前を抑え、よれを戻そうとした。
鼓動が早くなる。
どういうことなんだろう。二日連続で痴漢に、それも大胆な痴漢に遭うなんて。
昨日のようなことも初めてだったけど、今までスカートの中を触られたことだってなかったのに。なのに、昨日はアレを押しつけられ、今日はスカートの中の太腿をストッキング越しに触られている。まさか後ろの人、昨日の背広の人なんだろうか。
もしそうなら、今日はもっと大胆なことをされるかもしれない。
昨日、あんなことされても黙ってたんだし、行為がエスカレートしても不思議じゃない。
声を上げたほうがいいだろうか。
でも、あの背広の人は触ってくるようなことはしなかった。ただ押しつけて満足しただけ。
ということは違う人? でも――。
そんなことを考えて、もじもじしていたのがよくなかったのかもしれない。
わたしの大腿を触っていた掌が、障害物のなくなったおしりの下に滑るように移動し、ぴったりと閉じている太腿の間に指先を添わせてきた。
じりじりとスカートの後ろが持ち上げられる。
スカートの前側左右にあるボックスプリーツが広がり、引っ張られた裾が膝上を擦る。
この状態で、今、目の前のOL風の人が顔を上げたら、わたしのスカートが後ろから捲くられてると気づくんじゃないだろうか。そんなことになったら……。
冷や汗が出そうになる。
思わずバッグを持っていた手を放し、後ろからスカートを捲っている腕を掴んだ。
でも、それでどうすればいいんだろう。
このまま声を上げればいいんだ、そう思いながらも、声が出せない。
この状態で声を上げたら、スカートの中に手を入れられている姿を見られてしまう。
それは避けたい。他に何か方法は?
わたしの閉じている両腿の間に後ろから添われた指先は、そんなわたしの考えをあざ笑うかのように、ストッキングの上から腿の間を摩ってくる。
そしてその腕でスカートの後ろ側をさらに捲り上げながら、掌がおしりのすぐ下まで上がってきた。おしりが掌の熱を感じる。
と、すぐに掌全体がおしりにあてられ、その指先がゆっくりと内腿に割り込むように蠢く。
じっとりとした掌と指の感触。
額に冷や汗が滲むのを感じながら、内腿をぴったりと合わせたまま太腿に力を入れた。
でも、そんなのは何の障害にもならないというように、その指先はストッキングの表面を滑るようにゆっくりと内腿に割り込んでくる。わたしの内腿がその指の形を感じる。
その指先は、微妙に前後に動きながら、その指の太さで内腿を押し分けるようにしながら徐々に股間に近づいてくる。そして、すっと内腿から指が抜けるような感覚を感じた直後、股間に指があてられたのを感じた。指先がストッキングのマチ部分に添えられている。
じわっと背中に汗を感じた。
何なのこの人、腕を掴まれてるのに何の躊躇もないなんて、と、そう思ったとき、急に電車が揺れ、両足を閉じていたわたしは、踏ん張ることもできず、そのまま大きく身体を振られた。
反射的に右足を斜め前に出し、掴んでいた腕を放して、両手でつり革を掴む。
その瞬間、わたしが体勢を立て直すより早く、後ろから靴先がわたしの両足の間に割り込んできた。少し足を開いた状態になる。
割り込んだ靴が邪魔で閉じることができない。身体の前にぶら下がったバッグが揺れる。
思わず俯いて目を閉じた。
このままでは好いように触られてしまう。
でも声を上げて、今のわたしの姿を周りの目に晒すのも嫌だ。
おしりにあてられた掌がうねうねと動いて、指先がストッキングの上から股間を弄ってくる。
そこを触られる感触に、わたしは泣き出したい気分になった。
電車の中で、見ず知らずの人に、後ろからスカートの中に手を入れられて、わたしの大切なところを触られている。
そう思うと、吐き気がしそうなくらいに気持ち悪かった。
何でこんな目に遭わなくちゃならないんだろう。
恥ずかしさと怒り、嫌悪感とやりきれなさが綯い交ぜになって渦巻く。
だめだ。落ち着け、落ち着かないと。
湧き上がる負の感情を振り払うように、きつく両目を閉じる。
ストッキングと下着の上から触れられているだけだ。
直接、触られているわけじゃない。
目を瞑ったまま、静かに深く息を吸い込み、ゆっくりと吐く。
やはりここで騒ぎを起こして、こんな姿を周りの人に見られるのは避けたい。
スカートの中で股間に指を添えられているわたしの姿。
きっと好奇とあざ笑うような視線に晒されるに違いない。それは嫌だ。絶対に嫌だ。
やり過ごそう。周りに気づかれないようにやり過ごせばいい。
わたしに触れているのは誰かの指などではないと思えばいい。
そして、ただじっとしていればいい。
触られてるほうが無反応なら、きっと触るほうだってつまらないはずだ。
つまらないと思えば、すぐに飽きてやめるだろう。
そう考えて、俯いたまま薄く開いたわたしの視界に、スカートの前側左右にある二本のプリーツが、一杯に広がっている様子が映った。
わたしはつり革を持つ手に力を入れ、もう一方の手で身体の前で揺れているバッグを掴み、
それでスカートの前を強く抑えた。
そうだ。ただじっと人形のように立っていればいいだけ。
そんなわたしの気持ちを読み取ったように、男の指先が蠢き始める。
指の腹が、わたしの中心線に沿って微かに擦るように、ストッキングの上をゆっくりと後ろから前へ滑っていく。
鳥肌が立った。いや、意識しないように、感じないようにしないと。
指先は、じれったいほどゆっくりとした動きで、軽く摩るように動いていく。
ストッキングの感触を楽しむように、そこの閉じた唇を上からなぞるように。
そして、わたしの一番敏感な部分近くまでくると、そこを探るように弄ってから、ゆっくりと後ろに戻っていく。
一本の指先が、微妙な強弱で前後に動きつつ、微妙に押してくるような動き。
電車の揺れと同調するように、そこを軽くやわやわと刺激する指先。
何のつもりなんだろう。何か面白いんだろう。さっさと満足してしまえばいいのに。
擦るように摩るように、本当に微妙な力で、わたしの閉じた襞を沿うようになぞり、そこを揉み解すように触れながら、少しずつ左右へ広げるように動く指先。
その繰り返される動きで、わたしの下腹部が少しずつ熱くなるような気がした。
そして、前に伸ばされた指先が、わたしの敏感な部分近くを軽く押すように弄るたびに、じんわりとした疼きのようなものを感じ、額に汗が滲み出てくるような気がする。
その微かな指先の感触は、わたしの頭の中に、スカートの中で蠢く指の動きを情景として浮かび上がらせ、そしてその指先に、わたしの全神経を集中させるようだ。
下腹部の奥から何かが湧いてくる。
このまま触られ続けたら、濡れてしまうかもしれない。
下腹部の奥に感じる疼きを意識しないようにしつつも、そう思ってしまう。
そしてそう思うと、恥ずかしさで、眩暈のような感じに襲われる。
そこが濡れることを、わたしの身体がそう反応をするかもしれないことを、そこを弄ってる指の主に知られたくない。
意識してはだめだ。何か別のことを考えて気を紛らわせないと……。
そんなわたしの気持ちなど無視するように、指先は執拗にそこを責めてくる。
そこを押すように、擦りつけるようにしながら、蠢く指先。
でも、強く力が加えられることはない。微妙に違う、けど、同じように繰り返す動き。
わたしの中が熱くなる。ぞわぞわとした感覚が奥から広がってくる。
そこ全体が充血して、熱を帯び、張ってきてるような気もする。
同じようなことを繰り返していて、飽きないのかな。
わたしは、それと解る反応はしていないはずだから、つまんないと思うんだけど。
気持ち悪いだけなんだから、もうやめてくれないかな。
薄目を開けて前に座ってるOL風の人を見る。何事もないように黙って本を読んでいる。
両隣の人にも変わった様子はない。
そう、周りの人にも気づかれていない。気づかれるような反応はしてないんだから。
そんな相手を触って何が面白いのだろう。
そう思ったとき、指先の動きが変わった。
一本の指先を立てるようにして、そこの合わせめに少し押し込みながら前後に擦り、添えられた二本の指先が、わたしのそれの両側を掻くように摩る。
腰がぴくっと反応してしまった。下腹部の下に、じわっとした熱を感じる。
わたしの中に分泌物が滲みだしてくるような感じ。
薄く唇を開いて、静かに息を吸い込む。吐く息が少し湿り気を帯びているような気がする。
下腹部の奥から湧いてくる疼きが、少しずつ腰のほうにまで広がってくる感じ。
この感じ、何度か感じたことがある。彼に触れられたときに感じた感覚。
それは、彼とのセックスの記憶を呼び起こす。
その甘い感覚を思い出しそうになって、ふと我に返った。顔が熱くなる。
見ず知らずの人に触られて、いや、ストッキングと下着越しに触れられてるだけなのに、感じそうになるなんて、どうかしてる。
いや違う。そんな指先だけで感じそうになるなんてことはない。気持ち悪いだけだ。
わたしは、つり革を強く握って、腰にまで広がってくる痺れるような感覚を無視しようとした。……でも。
わたしのそこを押し開くように擦る一本の指先。
そしてそれに添えられた二本の指が、そこを広げるように動く。
その繰り返しの中で、三本の指先が、やわやわとそこ全体をマッサージするように、微妙な力加減で指先を擦りつけながら前後に動いていく。
その動きの中で、わたしの入り口に添えられた指先が、ストッキング越しに円を描くように、そこを揉み解すように蠢く。
ストッキングが下着に擦れる感触。わたしの形全体を浮き立たせるような指の動き。
充血した内部の襞が開き、広がっていく感覚。
前に伸ばされた指先は、わたしの敏感な部分を刺激して、鋭く突き上げるような感覚を残し、後ろに戻った指先は、わたしの入り口を弄って、鈍く湧き上がるような感覚を残す。
そしてまた、そのゆっくりとした一連の動作が繰り返される。
少しずつ指先を立てるようにしながら動く指先で、わたしが開かれていく。
そこから、少しずつ熱いものが滲み出てくるのが解る。
それは下着に滲みこみ、その濡れた下着の感触が、ますますわたしの中に熱い液を滲ませる。
下腹部の奥から徐々に湧き上がってくる抑えがたい疼き。
彼とのセックスでもこんな感じになったことはなかった。どうしちゃったんだろう。
そんなわたしの思考を溶かすように、前後左右にわたしを弄り続ける三本の巧みな指先。
わたしの内側の襞が押し広げられる感触。濡れた襞に纏わりつく下着の感触。
そこ全体に張り付くような下着の感触がむず痒さを感じさせ、口の中が渇いてくる。
わたしは無意識に閉じた目蓋の裏に、スカートの中の様子を描き出していた。
それを無視することができない。別のことを考えることができない。
指先は、わたしの濡れた襞を掻き分けるようにしながら、尿道口を刺激し、わたしの敏感な芯の辺りを前後左右に伸ばすように圧迫してから、また、わたしの入り口辺りに戻っていく。
敏感な芯にストッキングと下着越しの圧力を感じるたびに、大腿に力が入り、腰の辺りに引きつるような感覚を感じて、汗が滲み出てくる。
何か鋭いものが、そこから背中に突き抜けていくような感覚。
それを感じるたびに、わたしの中から熱い粘液が滲み出し、そこに触れている下着を汚す。
そこは敏感すぎるから直接弄ったことはあまりない。擦ってるとすぐに痛くなってくるから。
でも、今は違う。何度も刺激されてるのに、痛みを感じない。
それどころか刺激されるたびに、甘い、そして鋭利に突き上げるような感覚が、徐々に強くなっていくような感じ。
下着の上からだから、直接弄られてないから、痛みを感じないのかも。
そんなことを思いつつ、その敏感な芯が、充血して膨らんでいるような気がして、わたしは眉をしかめた。
開いた襞の内側を弄られるたび、下腹部の疼きが強くなり、膝が震えそうになる。
そのむず痒さと疼きは、そこを直接弄りたい、強く擦りたいという衝動を湧き上がらせる。
スカートをたくし上げ、自分の指先で、下着の中のそこを思い切り弄りたい。
そんな抑えがたい衝動。今まで感じたことのない衝動。
いや、何てことを考えてるんだろう。
わたしは唇を噛むようにして、ひたすらにその甘く広がる衝動を押さえ込もうとした。
気を付けていないと、腰が勝手に揺れ動くような気がする。
何なのだろう、この指先は。このしつこくねっちこく蠢く指先は。
いったい何をするつもり――。
その時、いきなりわたしの中に指先がめり込んでくるのを感じた。
指先がストッキングの上から下着ごと押し込まれて、そこが引きつるような感じ。
下着が強く引っ張られて、わたしの敏感な部分を圧迫し、濡れた下着が中の壁を強く擦る。
「っ!」
思わず息が漏れそうになり、奥歯を噛みしめて、のけぞりそうになるのを堪える。
一瞬の後、その指先は、下着に押し出されるように戻っていく。
下着の上からだ。実際に指先が中に入ってきたわけじゃない。膣口を強く押されただけ。
乱れそうになる呼吸を整えながら、そう自分に言い聞かせる。
奥から溢れだす熱い液体が止まない。脇の下を冷たい汗が伝う。
薄目を開けて前の席の様子を窺う。OL風の人は静かに文庫本を読んでいた。
気づかれていない。そう思い、ほっとする間もなく、また指の動きが繰り返される。
襞の内側や尿道口を擦るように刺激して、たまらないむず痒さと疼きをわたしに与え、わたしの芯を弄って、わたしの腰を揺らす。
そして、襞の内側を引っ張るようにしながら入り口に戻った指先が、その口の周りを揉み解すように擦ってから、またわたしの中に下着ごとめり込んで、わたしの背中を引きつらせる。
下腹部から全身に広がっていくどうしようもない疼き。全身が汗ばむ。
芯を弄られるたびに、そこから感じる鋭く突き抜けるような感覚が強まり、入り口に押し込まれるたびに、ぐちょぐちょになった下着が入り口を広げ、中の壁を擦って、また熱い液体を溢れださせる。
のけぞりそうになる身体を、肩に力を入れて何とか堪える。
つり革を握る手が汗で滑りそうだ。
そこはもう充分に、いや、充分すぎるほど濡れている。
熱い液体が奥から次々と湧き出してきて止まらない。
今まで、こんなに濡れたことはなかった。
その湿った感触は、ストッキングの上からでもはっきりと解るに違いない。
そう思うと、目の前が暗くなるような気がした。
今まで感じたことのない感覚を次々に感じさせられ、どんどん敏感になっていく身体。
わたしの意思と無関係に勝手に反応する身体に、わたしは不安な気持ちになってきた。
このままでは、どうかなってしまう――。
そう思ったとき、そこに感じるむず痒さが耐えられないほど強くなった気がした。
身体が熱くなり、背中が粟立つ。無反応を装うのも限界だ。
わたしは右足を持ち上げ気味にしながら、きつく両足を閉じた。
全身に力が入る。これ以上、そこを弄られたら大声を出してしまいそうだった。
内腿とあそこ全体で、そこに潜り込んでいる指を挟み込む。
股間から、じゅくっ、と音がしたような気がした。
わたしのスカートの中が湿った女の臭いが充満しているような気がして、額を汗が伝う。
わたしの股間に添えられたままの指先は、わたしの内腿で挟まれたまま、股間に密着して
動きを止めていた。股間と内腿がその指の太さを感じる。
電車の揺れと騒音。周りの空気が止まったように感じた。
しばらくそのまま固まっていたように思ったけど、
その指先が止まったのは一瞬だけだったのかもしれない。
その指は、再び、蠢くようにわたしの内側を擦り、その刺激で太腿から力が抜けそうになる。
それに耐えて、もう一度、強くその指を内腿で挟もうとしたとき、その指先が、わたしの敏感な芯を捉えた。
下腹部が痙攣したようにピクついた。
わたしの最も敏感な部分を下着越しに圧迫する指先。
そこにくい込むように曲げられた指先が、その芯を押しつぶすように動く。
今までとはまったく違う、強く押し込むような動き。
その鋭い刺激に、思わず奥歯を噛みしめる。
金属質の突き上げてくるような感覚が、そこに感じていたむず痒さを拡散させ、わたしの腰や背中に響いてくる。
その耐え難く、響くような感覚は、わたしの両足から力を抜き取っていくようだ。
わたしの腰全体を覆っていた疼きが全身に広がっていく。
周りの人の気配が薄れ、車内の騒音が遠くなる。
股間にあたってる指は、わたしの芯を刺激する指先の動きに連動して、わたしの濡れた襞を強く刺激する。濡れた下着がよれるように強く内側を擦ってくる。
その感触に下腹部から何かがこみ上げてくるようだ。
その強く湧き上がってくる感覚は、初めて感じるものだった。
さっきまでの微妙な触り方ではない、強くそこを擦る指が、わたしの中から何かを湧き上がらせる。
もっと強く刺激して欲しいと思ってしまう。
ただひたすらにその指の刺激だけに神経を集中してしまう。
腰が勝手に動き出しそうだ。
内腿が痙攣しそうに感じて、上げ気味にしていた右足を下ろして、両手でつり革を掴む。
それで両腿の締め付けから解放された指が、いきなり左右に振動した。
敏感な芯を押し込んでいた指先が、そのまま左右に細かく震えるように動く。
その強い刺激に、思わず目を見開き、またすぐに閉じる。頭が後ろに倒れそうだ。
首筋から汗が胸元へと伝い、つり革を持つ両手に力が入る。
たまらない。わたしの芯から頭のてっぺんに向けて何かが突き抜けていく。
次々と波打つようにツンとした感覚が突き抜けていく。
わたしの奥から湧き出す疼くような感覚も、それを追いかけるように広がっていく。
自然に腰が揺れてしまう。その腰の動きを止めることができない。
その指先の動きを追うように揺れ動く腰。スカートの裾も細かく揺れてるに違いない。
前の席に座っているOL風の人が醒めた視線で、そんなわたしを眺めている様子が
脳裏に浮かんだ。顔から火が出そうだ。
そしてそのイメージは、わたしの股間を弄る指のイメージで塗り潰されていく。
全身にぞわぞわとした感覚が広がって、頭の中心が痺れるような感じになる。
もう耐えられない。こみ上げてくる何かが爆発しそうだ。思わず唾を飲み込む。
後ろから下衆な笑い声が聞こえた気がして、わたしは、きつく目を瞑った。
全身に汗が滲み出てくる。なんてことだろう。
もう周りの人に気づかれているんじゃないだろうか。
わたしの細かく揺れ動くスカートを、わたしから漂う女の臭いを。
そう思うと、恥ずかしさで気が遠くなりそうだ。
吐く息が熱く湿り気を帯びているのが自分でも解る。
ぐぐっと何かがこみ上げてきた。思わず身体に力が入る。
熱い液体がとめどなく溢れてきて、そこにあてがわれた指を濡らして、
そのまま、内腿を伝い落ちてくるような気さえする。
次の瞬間、指先が捻るように強く芯を押し込み、
感じたことのない鋭く切り裂くような感覚が、一気に突き上げてきた。
これがイクということなのだろうか。
朝の通勤電車の中で、周りに気づかれているかもしれない状態で、わたしはイカされてしまうのだろうか。
そう思うと、憎悪や嫌悪、少しの恐怖とともに何か言い表せない衝動で訳がわからなくなる。
声が出そうになって、わたしは、唇を噛みしめた。頭の中が真っ白になっていく。
指先がわたしの股間を握るように強く圧迫した。
「ぃ……っ!」
思わずのけぞってしまった。背中や太腿の筋肉が勝手に収縮する感じ。
右足を上げて両腿で股間の指を強く挟みつける。内腿が痙攣したようにピクつく。
何が起きたのか解らない。
きつく閉じてた目蓋の裏にぱっと光が瞬いた気がする。何かがはじけたような感じ。
両足がつっぱり、わたしの中から熱い液体がとくとくと溢れだしてくる。
何なんだろうこれは。初めて感じるこの感じは。全身が引きつるような一瞬。
そのはじけたような感覚は、急速にしぼみ、そのまま足腰から力が抜けそうになった。
つり革を掴んだまま、踏ん張ろうとしても、膝が震えてしまう。
つり革を離したら、ちゃんと立つこともできそうにない。
これが絶頂というものなのだろうか。確かに叫びそうになった。でも、何で……。
背中や胸を伝う汗を感じながら放心状態で固まっていると、股間から手が抜かれた。
ピクっとおしりと太腿が反応する。次いでスカートが下ろされる感触を感じた。
徐々に周りの騒音が蘇ってくる。
終わったんだ。これで、やっと、あのしつこい指先から解放されるんだ。
そんなことをぼんやりと思っていると、前から声が聞こえた。
「だいじょうぶですか?」
その声ではっと我に返る。
「え?」
声の主は、目の前に座って文庫本を読んでいたOL風の人だった。血の気が引く。
見られてた? 混乱する頭でそう思いながらも、平静を装いつつ、応える。
「あ……、ええ、だ、だいじょうぶです。すみません」
声が震えて、瞬間的に全身から汗が噴出すのが解る。
この人はすべてを見ていたのではないだろうか。
電車の中で痴漢に触られて、それを拒絶できずに絶頂を感じてしまったわたしを。
指でイカされてしまったわたしを。
一瞬、パニックになりそうになる。しかしその人は、心配そうな視線でわたしを見た後、
「そうですか。何か気分が悪そうでしたから」
そういって、視線を手元の文庫本に戻した。何かを勘ぐるような視線ではない。
何かに気づいた様子もない。少しだけほっとする。
と、背中の気配が薄れ、電車が減速をはじめた。駅に近づいたらしい。
時間の感覚もなくなっていた。車内アナウンスが流れ、減速を続けた電車が駅に到着した。
ドアが開く。
周りの人込みが揺れる。でも、わたしは下腹部に感じる違和感で、身動き一つできなかった。
「あの、わたしここで降りますので、ここどうぞ。あの、本当にだいじょうぶですか?」
目の前のOL風の人が立ち上がり、席を指差す。
「あ……、ありがとう、ございます。すみません」
そう震える声で応えて、わたしはそろそろとその席に腰を下ろした。
席に座るとき、わたしの中が引きつるような気がした。
敏感な部分が下着に擦れて下腹部に電流が流れるような感じ。全身の力が抜けそうになる。
濡れて深く食い込んだ下着の感触が気持ち悪い。
わたしは、いったい何をされたのだろう。こんな感覚は感じたことがなかった。
身体が勝手に反応するなんて。涙が出そうになり、わたしは両手で顔を覆った。
――指だけでイカせちゃう痴漢もいるらしいよ
あの明るい同僚の声が蘇る。嫌悪感を感じていたはずなのに、わたしは感じてしまった。
まだ全身に火照りと違和感が残っている。自分の身体が信用できない。
電車の中で、痴漢に指先で触られただけで、今までセックスでも感じたことのなかった感覚を感じてしまった。そう、あの感じ。初めて感じた、何かが突き上げてくるような、何かが破裂するような感覚を。
わたしの身体はどうかなってしまったんだろうか。
いや、きっとしつこくねちねちと触られたから、それに身体が反射的に反応しただけだ。
途中で彼とのセックスを思い出してしまったのも悪かったのかもしれない。
実際、わたしは幸福感も満足感も感じなかった。ただ脱力感だけ。
忘れよう。こんなことは忘れてしまうに限る。あんな痴漢に遭うなんて運が悪かっただけだ。
幸い、誰にも気づかれていないようだし、別に、セックスしちゃったわけでもないのだ。
ただ、ストッキングの上から触られただけ。わたしに触れたのは下着だけ。
アレを押しつけられたわけでもない。
わたしが何をどう感じたかなんて、相手にも解るわけがない。
だから、このまま黙って忘れてしまえばいい。
しばらくそのまま座っているうちに、何とか気持ちも落ち着いてきて、次の駅に着く頃には、なんとか普通に歩けるようになっていた。
途中のコンビニで、ストッキングと下着を買おう。
会社のトイレでストッキングと下着を穿き替えて、そして、さっさと忘れてしまおう。
改札を抜けながら、そんなことを考えていた。
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